Poncotsu Club

車道側を歩いている男がいたんですよ

　君はカッコつけて車道側を歩いている男を見たことあるかい？ 女の子に車道側を歩かせているぽんこつな僕を横目に、勝ち誇った顔をしているエリート男のことさ。だいたい背が高くて、GOD SELECTION XXXのTシャツを着ている。僕はそういうヤツを見かけるたび、俺の方が良い男なんだけどなあと思わずにはいられないのだ。突っ込んできた車がダイハツ・ミゼットなら男の肩が脱臼する程度で済むかもしれないけど、もしもダッジ・バイパーなら二人とも死んでしまうだろう。自分がダメージを負うのが前提だ。しかも一緒に死んでしまう可能性もあるなんて、攻めあぐねているとしか言いようがない。ダメージを受けるのは、スカした君のジーンズだけで十分さ。

サイドを深くえぐられたディフェンダーと同じ

　つまるところ、男というのは、ボールの位置を意識しながら相手選手をしっかりマークしなくてはいけないディフェンダーと同じなのだ。車道側を歩いているエリート男というのは、サイド深くまでえぐられてしまったディフェンダーと一緒。ボールを見ていいのか、エリア内の選手を見ていいのか分からなくなってしまう。一方、歩道側を歩いているぽんこつ男は、ゴール裏から試合を観戦してるおじさんみたいなもんだ。それも、ユニフォームを着ることなく黙々と試合を見守るシブいおじさんだ。ボールの位置も選手も全部丸見え。とっておきの爆笑トークを繰り広げて女の子の表情を確認しつつ、車もしっかりケアできる。女の子と車を同一視野に入れることで、誰よりも早く危機を察知し、もしもの場合には女の子の腕を引っ張って助けることができるってわけさ！

女には車道側を、男には歩道側を

　ぽんこつ男は、自分がぽんこつであるように見せかけて、二人の命を救えるポジションを取り続ける。女の子に気づかれなくたっていい。ぽんこつだと思われたっていい。できるぽんこつ男は決してカッコつけることをしない。今日も僕は二人の未来を守るため、安全な車道側を歩く。